1 それから、イエスはそこを去って、ユダヤの地方とヨルダンの向こう側へ行かれたが、群衆がまた寄り集まったので、いつものように、また教えておられた。 2 そのとき、パリサイ人たちが近づいてきて、イエスを試みようとして質問した、「夫はその妻を出しても差しつかえないでしょうか」。 3 イエスは答えて言われた、「モーセはあなたがたになんと命じたか」。 4 彼らは言った、「モーセは、離縁状を書いて妻を出すことを許しました」。 5 そこでイエスは言われた、「モーセはあなたがたの心が、かたくななので、あなたがたのためにこの定めを書いたのである。 6 しかし、天地創造の初めから、『神は人を男と女とに造られた。 7 それゆえに、人はその父母を離れ、 8 ふたりの者は一体となるべきである』。彼らはもはや、ふたりではなく一体である。 9 だから、神が合わせられたものを、人は離してはならない」。 10 家にはいってから、弟子たちはまたこのことについて尋ねた。 11 そこで、イエスは言われた、「だれでも、自分の妻を出して他の女をめとる者は、その妻に対して姦淫を行うのである。 12 また妻が、その夫と別れて他の男にとつぐならば、姦淫を行うのである」。 13 イエスにさわっていただくために、人々が幼な子らをみもとに連れてきた。ところが、弟子たちは彼らをたしなめた。 14 それを見てイエスは憤り、彼らに言われた、「幼な子らをわたしの所に来るままにしておきなさい。止めてはならない。神の国はこのような者の国である。 15 よく聞いておくがよい。だれでも幼な子のように神の国を受けいれる者でなければ、そこにはいることは決してできない」。 16 そして彼らを抱き、手をその上において祝福された。 17 イエスが道に出て行かれると、ひとりの人が走り寄り、みまえにひざまずいて尋ねた、「よき師よ、永遠の生命を受けるために、何をしたらよいでしょうか」。 18 イエスは言われた、「なぜわたしをよき者と言うのか。神ひとりのほかによい者はいない。 19 いましめはあなたの知っているとおりである。『殺すな、姦淫するな、盗むな、偽証を立てるな。欺き取るな。父と母とを敬え』」。 20 すると、彼は言った、「先生、それらの事はみな、小さい時から守っております」。 21 イエスは彼に目をとめ、いつくしんで言われた、「あなたに足りないことが一つある。帰って、持っているものをみな売り払って、貧しい人々に施しなさい。そうすれば、天に宝を持つようになろう。そして、わたしに従ってきなさい」。 22 すると、彼はこの言葉を聞いて、顔を曇らせ、悲しみながら立ち去った。たくさんの資産を持っていたからである。 23 それから、イエスは見まわして、弟子たちに言われた、「財産のある者が神の国にはいるのは、なんとむずかしいことであろう」。 24 弟子たちはこの言葉に驚き怪しんだ。イエスは更に言われた、「子たちよ、神の国にはいるのは、なんとむずかしいことであろう。 25 富んでいる者が神の国にはいるよりは、らくだが針の穴を通る方が、もっとやさしい」。 …
マルコによる福音書 9
1 また、彼らに言われた、「よく聞いておくがよい。神の国が力をもって来るのを見るまでは、決して死を味わわない者が、ここに立っている者の中にいる」。 2 六日の後、イエスは、ただペテロ、ヤコブ、ヨハネだけを連れて、高い山に登られた。ところが、彼らの目の前でイエスの姿が変り、 3 その衣は真白く輝き、どんな布さらしでも、それほどに白くすることはできないくらいになった。 4 すると、エリヤがモーセと共に彼らに現れて、イエスと語り合っていた。 5 ペテロはイエスにむかって言った、「先生、わたしたちがここにいるのは、すばらしいことです。それで、わたしたちは小屋を三つ建てましょう。一つはあなたのために、一つはモーセのために、一つはエリヤのために」。 6 そう言ったのは、みんなの者が非常に恐れていたので、ペテロは何を言ってよいか、わからなかったからである。 7 すると、雲がわき起って彼らをおおった。そして、その雲の中から声があった、「これはわたしの愛する子である。これに聞け」。 8 彼らは急いで見まわしたが、もはやだれも見えず、ただイエスだけが、自分たちと一緒におられた。 9 一同が山を下って来るとき、イエスは「人の子が死人の中からよみがえるまでは、いま見たことをだれにも話してはならない」と、彼らに命じられた。 10 彼らはこの言葉を心にとめ、死人の中からよみがえるとはどういうことかと、互に論じ合った。 11 そしてイエスに尋ねた、「なぜ、律法学者たちは、エリヤが先に来るはずだと言っているのですか」。 12 イエスは言われた、「確かに、エリヤが先にきて、万事を元どおりに改める。しかし、人の子について、彼が多くの苦しみを受け、かつ恥ずかしめられると、書いてあるのはなぜか。 13 しかしあなたがたに言っておく、エリヤはすでにきたのだ。そして彼について書いてあるように、人々は自分かってに彼をあしらった」。 14 さて、彼らがほかの弟子たちの所にきて見ると、大ぜいの群衆が弟子たちを取り囲み、そして律法学者たちが彼らと論じ合っていた。 15 群衆はみな、すぐイエスを見つけて、非常に驚き、駆け寄ってきて、あいさつをした。 16 イエスが彼らに、「あなたがたは彼らと何を論じているのか」と尋ねられると、 17 群衆のひとりが答えた、「先生、おしの霊につかれているわたしのむすこを、こちらに連れて参りました。 18 霊がこのむすこにとりつきますと、どこででも彼を引き倒し、それから彼はあわを吹き、歯をくいしばり、からだをこわばらせてしまいます。それでお弟子たちに、この霊を追い出してくださるように願いましたが、できませんでした」。 19 イエスは答えて言われた、「ああ、なんという不信仰な時代であろう。いつまで、わたしはあなたがたと一緒におられようか。いつまで、あなたがたに我慢ができようか。その子をわたしの所に連れてきなさい」。 20 そこで人々は、その子をみもとに連れてきた。霊がイエスを見るや否や、その子をひきつけさせたので、子は地に倒れ、あわを吹きながらころげまわった。 21 そこで、イエスが父親に「いつごろから、こんなになったのか」と尋ねられると、父親は答えた、「幼い時からです。 22 霊はたびたび、この子を火の中、水の中に投げ入れて、殺そうとしました。しかしできますれば、わたしどもをあわれんでお助けください」。 23 イエスは彼に言われた、「もしできれば、と言うのか。信ずる者には、どんな事でもできる」。 24 その子の父親はすぐ叫んで言った、「信じます。不信仰なわたしを、お助けください」。 25 イエスは群衆が駆け寄って来るのをごらんになって、けがれた霊をしかって言われた、「おしとつんぼの霊よ、わたしがおまえに命じる。この子から出て行け。二度と、はいって来るな」。 …
マルコによる福音書 8
1 そのころ、また大ぜいの群衆が集まっていたが、何も食べるものがなかったので、イエスは弟子たちを呼び寄せて言われた、 2 「この群衆がかわいそうである。もう三日間もわたしと一緒にいるのに、何も食べるものがない。 3 もし、彼らを空腹のまま家に帰らせるなら、途中で弱り切ってしまうであろう。それに、なかには遠くからきている者もある」。 4 弟子たちは答えた、「こんな荒野で、どこからパンを手に入れて、これらの人々にじゅうぶん食べさせることができましょうか」。 5 イエスが弟子たちに、「パンはいくつあるか」と尋ねられると、「七つあります」と答えた。 6 そこでイエスは群衆に地にすわるように命じられた。そして七つのパンを取り、感謝してこれをさき、人々に配るように弟子たちに渡されると、弟子たちはそれを群衆に配った。 7 また小さい魚が少しばかりあったので、祝福して、それをも人々に配るようにと言われた。 8 彼らは食べて満腹した。そして残ったパンくずを集めると、七かごになった。 9 人々の数はおよそ四千人であった。それからイエスは彼らを解散させ、 10 すぐ弟子たちと共に舟に乗って、ダルマヌタの地方へ行かれた。 11 パリサイ人たちが出てきて、イエスを試みようとして議論をしかけ、天からのしるしを求めた。 12 イエスは、心の中で深く嘆息して言われた、「なぜ、今の時代はしるしを求めるのだろう。よく言い聞かせておくが、しるしは今の時代には決して与えられない」。 13 そして、イエスは彼らをあとに残し、また舟に乗って向こう岸へ行かれた。 14 弟子たちはパンを持って来るのを忘れていたので、舟の中にはパン一つしか持ち合わせがなかった。 15 そのとき、イエスは彼らを戒めて、「パリサイ人のパン種とヘロデのパン種とを、よくよく警戒せよ」と言われた。 16 弟子たちは、これは自分たちがパンを持っていないためであろうと、互に論じ合った。 17 イエスはそれと知って、彼らに言われた、「なぜ、パンがないからだと論じ合っているのか。まだわからないのか、悟らないのか。あなたがたの心は鈍くなっているのか。 18 目があっても見えないのか。耳があっても聞えないのか。まだ思い出さないのか。 19 五つのパンをさいて五千人に分けたとき、拾い集めたパンくずは、幾つのかごになったか」。弟子たちは答えた、「十二かごです」。 20 「七つのパンを四千人に分けたときには、パンくずを幾つのかごに拾い集めたか」。「七かごです」と答えた。 21 そこでイエスは彼らに言われた、「まだ悟らないのか」。 22 そのうちに、彼らはベツサイダに着いた。すると人々が、ひとりの盲人を連れてきて、さわってやっていただきたいとお願いした。 23 イエスはこの盲人の手をとって、村の外に連れ出し、その両方の目につばきをつけ、両手を彼に当てて、「何か見えるか」と尋ねられた。 24 すると彼は顔を上げて言った、「人が見えます。木のように見えます。歩いているようです」。 25 それから、イエスが再び目の上に両手を当てられると、盲人は見つめているうちに、なおってきて、すべてのものがはっきりと見えだした。 …
マルコによる福音書 7
1 さて、パリサイ人と、ある律法学者たちとが、エルサレムからきて、イエスのもとに集まった。 2 そして弟子たちのうちに、不浄な手、すなわち洗わない手で、パンを食べている者があるのを見た。 3 もともと、パリサイ人をはじめユダヤ人はみな、昔の人の言伝えをかたく守って、念入りに手を洗ってからでないと、食事をしない。 4 また市場から帰ったときには、身を清めてからでないと、食事をせず、なおそのほかにも、杯、鉢、銅器を洗うことなど、昔から受けついでかたく守っている事が、たくさんあった。 5 そこで、パリサイ人と律法学者たちとは、イエスに尋ねた、「なぜ、あなたの弟子たちは、昔の人の言伝えに従って歩まないで、不浄な手でパンを食べるのですか」。 6 38 Mark.7.6 7 39 Mark.7.7 8 あなたがたは、神のいましめをさしおいて、人間の言伝えを固執している」。 9 また、言われた、「あなたがたは、自分たちの言伝えを守るために、よくも神のいましめを捨てたものだ。 10 モーセは言ったではないか、『父と母とを敬え』、また『父または母をののしる者は、必ず死に定められる』と。 11 それだのに、あなたがたは、もし人が父または母にむかって、あなたに差上げるはずのこのものはコルバン、すなわち、供え物ですと言えば、それでよいとして、 12 その人は父母に対して、もう何もしないで済むのだと言っている。 13 こうしてあなたがたは、自分たちが受けついだ言伝えによって、神の言を無にしている。また、このような事をしばしばおこなっている」。 14 それから、イエスは再び群衆を呼び寄せて言われた、「あなたがたはみんな、わたしの言うことを聞いて悟るがよい。 15 すべて外から人の中にはいって、人をけがしうるものはない。かえって、人の中から出てくるものが、人をけがすのである。〔 16 聞く耳のある者は聞くがよい〕」。 17 イエスが群衆を離れて家にはいられると、弟子たちはこの譬について尋ねた。 18 すると、言われた、「あなたがたも、そんなに鈍いのか。すべて、外から人の中にはいって来るものは、人を汚し得ないことが、わからないのか。 19 それは人の心の中にはいるのではなく、腹の中にはいり、そして、外に出て行くだけである」。イエスはこのように、どんな食物でもきよいものとされた。 20 さらに言われた、「人から出て来るもの、それが人をけがすのである。 21 すなわち内部から、人の心の中から、悪い思いが出て来る。不品行、盗み、殺人、 22 姦淫、貪欲、邪悪、欺き、好色、妬み、誹り、高慢、愚痴。 23 これらの悪はすべて内部から出てきて、人をけがすのである」。 24 さて、イエスは、そこを立ち去って、ツロの地方に行かれた。そして、だれにも知れないように、家の中にはいられたが、隠れていることができなかった。 …
マルコによる福音書 6
1 イエスはそこを去って、郷里に行かれたが、弟子たちも従って行った。 2 そして、安息日になったので、会堂で教えはじめられた。それを聞いた多くの人々は、驚いて言った、「この人は、これらのことをどこで習ってきたのか。また、この人の授かった知恵はどうだろう。このような力あるわざがその手で行われているのは、どうしてか。 3 この人は大工ではないか。マリヤのむすこで、ヤコブ、ヨセ、ユダ、シモンの兄弟ではないか。またその姉妹たちも、ここにわたしたちと一緒にいるではないか」。こうして彼らはイエスにつまずいた。 4 イエスは言われた、「預言者は、自分の郷里、親族、家以外では、どこででも敬われないことはない」。 5 そして、そこでは力あるわざを一つもすることができず、ただ少数の病人に手をおいていやされただけであった。 6 57 Mark.6.6 7 また十二弟子を呼び寄せ、ふたりずつつかわすことにして、彼らにけがれた霊を制する権威を与え、 8 また旅のために、つえ一本のほかには何も持たないように、パンも、袋も、帯の中に銭も持たず、 9 ただわらじをはくだけで、下着も二枚は着ないように命じられた。 10 そして彼らに言われた、「どこへ行っても、家にはいったなら、その土地を去るまでは、そこにとどまっていなさい。 11 また、あなたがたを迎えず、あなたがたの話を聞きもしない所があったなら、そこから出て行くとき、彼らに対する抗議のしるしに、足の裏のちりを払い落しなさい」。 12 そこで、彼らは出て行って、悔改めを宣べ伝え、 13 多くの悪霊を追い出し、大ぜいの病人に油をぬっていやした。 14 さて、イエスの名が知れわたって、ヘロデ王の耳にはいった。ある人々は「バプテスマのヨハネが、死人の中からよみがえってきたのだ。それで、あのような力が彼のうちに働いているのだ」と言い、 15 他の人々は「彼はエリヤだ」と言い、また他の人々は「昔の預言者のような預言者だ」と言った。 16 ところが、ヘロデはこれを聞いて、「わたしが首を切ったあのヨハネがよみがえったのだ」と言った。 17 このヘロデは、自分の兄弟ピリポの妻ヘロデヤをめとったが、そのことで、人をつかわし、ヨハネを捕えて獄につないだ。 18 それは、ヨハネがヘロデに、「兄弟の妻をめとるのは、よろしくない」と言ったからである。 19 そこで、ヘロデヤはヨハネを恨み、彼を殺そうと思っていたが、できないでいた。 20 それはヘロデが、ヨハネは正しくて聖なる人であることを知って、彼を恐れ、彼に保護を加え、またその教を聞いて非常に悩みながらも、なお喜んで聞いていたからである。 21 ところが、よい機会がきた。ヘロデは自分の誕生日の祝に、高官や将校やガリラヤの重立った人たちを招いて宴会を催したが、 22 そこへ、このヘロデヤの娘がはいってきて舞をまい、ヘロデをはじめ列座の人たちを喜ばせた。そこで王はこの少女に「ほしいものはなんでも言いなさい。あなたにあげるから」と言い、 23 さらに「ほしければ、この国の半分でもあげよう」と誓って言った。 24 そこで少女は座をはずして、母に「何をお願いしましょうか」と尋ねると、母は「バプテスマのヨハネの首を」と答えた。 25 …
マルコによる福音書 5
1 こうして彼らは海の向こう岸、ゲラサ人の地に着いた。 2 それから、イエスが舟からあがられるとすぐに、けがれた霊につかれた人が墓場から出てきて、イエスに出会った。 3 この人は墓場をすみかとしており、もはやだれも、鎖でさえも彼をつなぎとめて置けなかった。 4 彼はたびたび足かせや鎖でつながれたが、鎖を引きちぎり、足かせを砕くので、だれも彼を押えつけることができなかったからである。 5 そして、夜昼たえまなく墓場や山で叫びつづけて、石で自分のからだを傷つけていた。 6 ところが、この人がイエスを遠くから見て、走り寄って拝し、 7 大声で叫んで言った、「いと高き神の子イエスよ、あなたはわたしとなんの係わりがあるのです。神に誓ってお願いします。どうぞ、わたしを苦しめないでください」。 8 それは、イエスが、「けがれた霊よ、この人から出て行け」と言われたからである。 9 また彼に、「なんという名前か」と尋ねられると、「レギオンと言います。大ぜいなのですから」と答えた。 10 そして、自分たちをこの土地から追い出さないようにと、しきりに願いつづけた。 11 さて、そこの山の中腹に、豚の大群が飼ってあった。 12 霊はイエスに願って言った、「わたしどもを、豚にはいらせてください。その中へ送ってください」。 13 イエスがお許しになったので、けがれた霊どもは出て行って、豚の中へはいり込んだ。すると、その群れは二千匹ばかりであったが、がけから海へなだれを打って駆け下り、海の中でおぼれ死んでしまった。 14 豚を飼う者たちが逃げ出して、町や村にふれまわったので、人々は何事が起ったのかと見にきた。 15 そして、イエスのところにきて、悪霊につかれた人が着物を着て、正気になってすわっており、それがレギオンを宿していた者であるのを見て、恐れた。 16 また、それを見た人たちは、悪霊につかれた人の身に起った事と豚のこととを、彼らに話して聞かせた。 17 そこで、人々はイエスに、この地方から出て行っていただきたいと、頼みはじめた。 18 イエスが舟に乗ろうとされると、悪霊につかれていた人がお供をしたいと願い出た。 19 しかし、イエスはお許しにならないで、彼に言われた、「あなたの家族のもとに帰って、主がどんなに大きなことをしてくださったか、またどんなにあわれんでくださったか、それを知らせなさい」。 20 そこで、彼は立ち去り、そして自分にイエスがしてくださったことを、ことごとくデカポリスの地方に言いひろめ出したので、人々はみな驚き怪しんだ。 21 イエスがまた舟で向こう岸へ渡られると、大ぜいの群衆がみもとに集まってきた。イエスは海べにおられた。 22 そこへ、会堂司のひとりであるヤイロという者がきて、イエスを見かけるとその足もとにひれ伏し、 23 しきりに願って言った、「わたしの幼い娘が死にかかっています。どうぞ、その子がなおって助かりますように、おいでになって、手をおいてやってください」。 24 そこで、イエスは彼と一緒に出かけられた。大ぜいの群衆もイエスに押し迫りながら、ついて行った。 25 さてここに、十二年間も長血をわずらっている女がいた。 …
マルコによる福音書 4
1 イエスはまたも、海べで教えはじめられた。おびただしい群衆がみもとに集まったので、イエスは舟に乗ってすわったまま、海上におられ、群衆はみな海に沿って陸地にいた。 2 イエスは譬で多くの事を教えられたが、その教の中で彼らにこう言われた、 3 「聞きなさい、種まきが種をまきに出て行った。 4 まいているうちに、道ばたに落ちた種があった。すると、鳥がきて食べてしまった。 5 ほかの種は土の薄い石地に落ちた。そこは土が深くないので、すぐ芽を出したが、 6 日が上ると焼けて、根がないために枯れてしまった。 7 ほかの種はいばらの中に落ちた。すると、いばらが伸びて、ふさいでしまったので、実を結ばなかった。 8 ほかの種は良い地に落ちた。そしてはえて、育って、ますます実を結び、三十倍、六十倍、百倍にもなった」。 9 そして言われた、「聞く耳のある者は聞くがよい」。 10 イエスがひとりになられた時、そばにいた者たちが、十二弟子と共に、これらの譬について尋ねた。 11 そこでイエスは言われた、「あなたがたには神の国の奥義が授けられているが、ほかの者たちには、すべてが譬で語られる。 12 42 Mark.4.12 13 また彼らに言われた、「あなたがたはこの譬がわからないのか。それでは、どうしてすべての譬がわかるだろうか。 14 種まきは御言をまくのである。 15 道ばたに御言がまかれたとは、こういう人たちのことである。すなわち、御言を聞くと、すぐにサタンがきて、彼らの中にまかれた御言を、奪って行くのである。 16 同じように、石地にまかれたものとは、こういう人たちのことである。御言を聞くと、すぐに喜んで受けるが、 17 自分の中に根がないので、しばらく続くだけである。そののち、御言のために困難や迫害が起ってくると、すぐつまずいてしまう。 18 また、いばらの中にまかれたものとは、こういう人たちのことである。御言を聞くが、 19 世の心づかいと、富の惑わしと、その他いろいろな欲とがはいってきて、御言をふさぐので、実を結ばなくなる。 20 また、良い地にまかれたものとは、こういう人たちのことである。御言を聞いて受けいれ、三十倍、六十倍、百倍の実を結ぶのである」。 21 また彼らに言われた、「ますの下や寝台の下に置くために、あかりを持ってくることがあろうか。燭台の上に置くためではないか。 22 なんでも、隠されているもので、現れないものはなく、秘密にされているもので、明るみに出ないものはない。 23 聞く耳のある者は聞くがよい」。 24 また彼らに言われた、「聞くことがらに注意しなさい。あなたがたの量るそのはかりで、自分にも量り与えられ、その上になお増し加えられるであろう。 25 …
マルコによる福音書 3
1 イエスがまた会堂にはいられると、そこに片手のなえた人がいた。 2 人々はイエスを訴えようと思って、安息日にその人をいやされるかどうかをうかがっていた。 3 すると、イエスは片手のなえたその人に、「立って、中へ出てきなさい」と言い、 4 人々にむかって、「安息日に善を行うのと悪を行うのと、命を救うのと殺すのと、どちらがよいか」と言われた。彼らは黙っていた。 5 イエスは怒りを含んで彼らを見まわし、その心のかたくななのを嘆いて、その人に「手を伸ばしなさい」と言われた。そこで手を伸ばすと、その手は元どおりになった。 6 パリサイ人たちは出て行って、すぐにヘロデ党の者たちと、なんとかしてイエスを殺そうと相談しはじめた。 7 それから、イエスは弟子たちと共に海べに退かれたが、ガリラヤからきたおびただしい群衆がついて行った。またユダヤから、 8 エルサレムから、イドマヤから、更にヨルダンの向こうから、ツロ、シドンのあたりからも、おびただしい群衆が、そのなさっていることを聞いて、みもとにきた。 9 イエスは群衆が自分に押し迫るのを避けるために、小舟を用意しておけと、弟子たちに命じられた。 10 それは、多くの人をいやされたので、病苦に悩む者は皆イエスにさわろうとして、押し寄せてきたからである。 11 また、けがれた霊どもはイエスを見るごとに、みまえにひれ伏し、叫んで、「あなたこそ神の子です」と言った。 12 イエスは御自身のことを人にあらわさないようにと、彼らをきびしく戒められた。 13 さてイエスは山に登り、みこころにかなった者たちを呼び寄せられたので、彼らはみもとにきた。 14 そこで十二人をお立てになった。彼らを自分のそばに置くためであり、さらに宣教につかわし、 15 また悪霊を追い出す権威を持たせるためであった。 16 こうして、この十二人をお立てになった。そしてシモンにペテロという名をつけ、 17 またゼベダイの子ヤコブと、ヤコブの兄弟ヨハネ、彼らにはボアネルゲ、すなわち、雷の子という名をつけられた。 18 つぎにアンデレ、ピリポ、バルトロマイ、マタイ、トマス、アルパヨの子ヤコブ、タダイ、熱心党のシモン、 19 36 Mark.3.19 20 群衆がまた集まってきたので、一同は食事をする暇もないほどであった。 21 身内の者たちはこの事を聞いて、イエスを取押えに出てきた。気が狂ったと思ったからである。 22 また、エルサレムから下ってきた律法学者たちも、「彼はベルゼブルにとりつかれている」と言い、「悪霊どものかしらによって、悪霊どもを追い出しているのだ」とも言った。 23 そこでイエスは彼らを呼び寄せ、譬をもって言われた、「どうして、サタンがサタンを追い出すことができようか。 24 もし国が内部で分れ争うなら、その国は立ち行かない。 25 …
マルコによる福音書 2
1 幾日かたって、イエスがまたカペナウムにお帰りになったとき、家におられるといううわさが立ったので、 2 多くの人々が集まってきて、もはや戸口のあたりまでも、すきまが無いほどになった。そして、イエスは御言を彼らに語っておられた。 3 すると、人々がひとりの中風の者を四人の人に運ばせて、イエスのところに連れてきた。 4 ところが、群衆のために近寄ることができないので、イエスのおられるあたりの屋根をはぎ、穴をあけて、中風の者を寝かせたまま、床をつりおろした。 5 イエスは彼らの信仰を見て、中風の者に、「子よ、あなたの罪はゆるされた」と言われた。 6 ところが、そこに幾人かの律法学者がすわっていて、心の中で論じた、 7 「この人は、なぜあんなことを言うのか。それは神をけがすことだ。神ひとりのほかに、だれが罪をゆるすことができるか」。 8 イエスは、彼らが内心このように論じているのを、自分の心ですぐ見ぬいて、「なぜ、あなたがたは心の中でそんなことを論じているのか。 9 中風の者に、あなたの罪はゆるされた、と言うのと、起きよ、床を取りあげて歩け、と言うのと、どちらがたやすいか。 10 しかし、人の子は地上で罪をゆるす権威をもっていることが、あなたがたにわかるために」と彼らに言い、中風の者にむかって、 11 「あなたに命じる。起きよ、床を取りあげて家に帰れ」と言われた。 12 すると彼は起きあがり、すぐに床を取りあげて、みんなの前を出て行ったので、一同は大いに驚き、神をあがめて、「こんな事は、まだ一度も見たことがない」と言った。 13 イエスはまた海べに出て行かれると、多くの人々がみもとに集まってきたので、彼らを教えられた。 14 また途中で、アルパヨの子レビが収税所にすわっているのをごらんになって、「わたしに従ってきなさい」と言われた。すると彼は立ちあがって、イエスに従った。 15 それから彼の家で、食事の席についておられたときのことである。多くの取税人や罪人たちも、イエスや弟子たちと共にその席に着いていた。こんな人たちが大ぜいいて、イエスに従ってきたのである。 16 パリサイ派の律法学者たちは、イエスが罪人や取税人たちと食事を共にしておられるのを見て、弟子たちに言った、「なぜ、彼は取税人や罪人などと食事を共にするのか」。 17 イエスはこれを聞いて言われた、「丈夫な人には医者はいらない。いるのは病人である。わたしがきたのは、義人を招くためではなく、罪人を招くためである」。 18 ヨハネの弟子とパリサイ人とは、断食をしていた。そこで人々がきて、イエスに言った、「ヨハネの弟子たちとパリサイ人の弟子たちとが断食をしているのに、あなたの弟子たちは、なぜ断食をしないのですか」。 19 するとイエスは言われた、「婚礼の客は、花婿が一緒にいるのに、断食ができるであろうか。花婿と一緒にいる間は、断食はできない。 20 しかし、花婿が奪い去られる日が来る。その日には断食をするであろう。 21 だれも、真新しい布ぎれを、古い着物に縫いつけはしない。もしそうすれば、新しいつぎは古い着物を引き破り、そして、破れがもっとひどくなる。 22 まただれも、新しいぶどう酒を古い皮袋に入れはしない。もしそうすれば、ぶどう酒は皮袋をはり裂き、そして、ぶどう酒も皮袋もむだになってしまう。〔だから、新しいぶどう酒は新しい皮袋に入れるべきである〕」。 23 ある安息日に、イエスは麦畑の中をとおって行かれた。そのとき弟子たちが、歩きながら穂をつみはじめた。 24 すると、パリサイ人たちがイエスに言った、「いったい、彼らはなぜ、安息日にしてはならぬことをするのですか」。 25 そこで彼らに言われた、「あなたがたは、ダビデとその供の者たちとが食物がなくて飢えたとき、ダビデが何をしたか、まだ読んだことがないのか。 …
マルコによる福音書 1
1 神の子イエス・キリストの福音のはじめ。 2 46 Mark.1.2 3 47 Mark.1.3 4 バプテスマのヨハネが荒野に現れて、罪のゆるしを得させる悔改めのバプテスマを宣べ伝えていた。 5 そこで、ユダヤ全土とエルサレムの全住民とが、彼のもとにぞくぞくと出て行って、自分の罪を告白し、ヨルダン川でヨハネからバプテスマを受けた。 6 このヨハネは、らくだの毛ごろもを身にまとい、腰に皮の帯をしめ、いなごと野蜜とを食物としていた。 7 彼は宣べ伝えて言った、「わたしよりも力のあるかたが、あとからおいでになる。わたしはかがんで、そのくつのひもを解く値うちもない。 8 わたしは水でバプテスマを授けたが、このかたは、聖霊によってバプテスマをお授けになるであろう」。 9 そのころ、イエスはガリラヤのナザレから出てきて、ヨルダン川で、ヨハネからバプテスマをお受けになった。 10 そして、水の中から上がられるとすぐ、天が裂けて、聖霊がはとのように自分に下って来るのを、ごらんになった。 11 すると天から声があった、「あなたはわたしの愛する子、わたしの心にかなう者である」。 12 それからすぐに、御霊がイエスを荒野に追いやった。 13 イエスは四十日のあいだ荒野にいて、サタンの試みにあわれた。そして獣もそこにいたが、御使たちはイエスに仕えていた。 14 ヨハネが捕えられた後、イエスはガリラヤに行き、神の福音を宣べ伝えて言われた、 15 「時は満ちた、神の国は近づいた。悔い改めて福音を信ぜよ」。 16 さて、イエスはガリラヤの海べを歩いて行かれ、シモンとシモンの兄弟アンデレとが、海で網を打っているのをごらんになった。彼らは漁師であった。 17 イエスは彼らに言われた、「わたしについてきなさい。あなたがたを、人間をとる漁師にしてあげよう」。 18 すると、彼らはすぐに網を捨てて、イエスに従った。 19 また少し進んで行かれると、ゼベダイの子ヤコブとその兄弟ヨハネとが、舟の中で網を繕っているのをごらんになった。 20 そこで、すぐ彼らをお招きになると、父ゼベダイを雇人たちと一緒に舟において、イエスのあとについて行った。 21 それから、彼らはカペナウムに行った。そして安息日にすぐ、イエスは会堂にはいって教えられた。 22 人々は、その教に驚いた。律法学者たちのようにではなく、権威ある者のように、教えられたからである。 23 ちょうどその時、けがれた霊につかれた者が会堂にいて、叫んで言った、 24 「ナザレのイエスよ、あなたはわたしたちとなんの係わりがあるのです。わたしたちを滅ぼしにこられたのですか。あなたがどなたであるか、わかっています。神の聖者です」。 …